それから何週間か経った時のことだった。今日はわたしは撮影はないので、リュウの撮影を見学することにした。
「リュウ」
「なでしこ?お前なんでいるんだ? 今日は撮影休みだろ?」
「うん、そうなんだけど……。なんか気になっちゃって、リュウのこと」
本当はそんなの言い訳なんだけどね。本当は、荒蒔繭那のことが気になって来てしまった。
「へえ? お前そんなに俺のこと……」なんてリュウがふざけて言うから、慌てて「ち、違うから!」と訂正を入れるものの、リュウはきっと気付いてると思う。
「リュウくん!」
するとその時、荒蒔繭那がにこやかな笑顔を振りまいて、リュウの元に近付いてきた。
きた、荒蒔繭那……!いつも通りの怪しい笑顔をしている。リュウのことを狙っていることは、もうすでに分かっている。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「……ああ。よろしく」
なんて言っているリュウだけど、荒蒔繭那に対してあまりいい顔ではないことは確かだ。