「……大丈夫では、ないかな」
色んな意味で大丈夫じゃない。だってなんか、心が痛い。
それだけじゃない。リュウが違う顔を見せるだけで、それだけでなんか……。〈辛い〉と感じた。
「……なでしこ?」
リュウはわたしの顔を覗き込むと、不思議そうに見つめていた。
「……何でも、ない」
だけどそれしか言えなかった。リュウにあまり心配かけたくなくて……。
「リュウさん!撮影再開します! お願いします!」
「はい! 悪い。行くな?」
リュウは慌ててスタジオへと戻った。その瞬間に見えたのは、荒蒔繭那がわたしのことを睨んでいたことだった。
……わたし、完全に荒蒔繭那に恨まれてるよね。あんなに睨まれるなんて思わなかった。
きっとリュウを取られたくないって、思ってるのかもな……。まぁ偽の彼女だとはいえ、表向きは美男美女カップル。世間様に公表しているカップル。
だけどわたしは一般人の……ハズだったけど。だけど、リュウのことを好きな訳じゃない。



