「か、返してください!」

 わたしは彼の手から学生証を奪い取った。

 「山桜なでしこさん、ちょっとお願いがあるんだけど?」

 だけど突然、リュウにそう言われた。
 
 「え? お、お願い……?」
 
 なんだかイヤーな予感がした。何か言われるんだ、そう思った。

 「そう。ちょっとお茶でもしながら話さない?」

 「……は、はぁ?」
 
 なんでわたしがリュウとお茶なんか……!と思ったけど、人目もあるのでリュウに付いていくことになった。

 なんだかオシャレなカフェに入ったリュウは、奥の席に座り、メニュー表を出すと、わたしに何飲む?と聞いてきた。

 「えっ?」

 「おごるよ。何飲む?」

 「い、いりません」と答えるとリュウは、勝手にアイスコーヒーとオレンジジュースをオーダーした。
 
 「い、いらないって言ったのに……!」

 「まあまあ。そんなにカリカリしないで?山桜なでしこさん?」

 「……な、名前で呼ばないでください」