わたしの出番はまだ先なのに、今から不安になって、逃げだしたくなる。
「はい。カーット! モニターチェック入りまーす!」
リュウは、水を飲むと、わたしの方をチラッと見た。するとすかさず、荒蒔繭那がリュウのそばへと駆け寄った。
荒蒔繭那はそれをわたしに見せつけるかのように、怪しく笑ったのだ。
……え、なに?その笑いは? まるでわたしよりも自分のほうが、リュウに相応しいとでも言うかのような。そんな感じがした。
「さすがリュウさんですね!思わずリュウさんの演技に引き込まれてしまいました」
なんてわざとらしく、荒蒔繭那は言った。
だけどそんなこと言われてもリュウは、動じたりしなくて。「どうも」それだけ言うと、わたしのそばへと来たのだった。
「え……。リュウ……?」
「なでしこ、大丈夫か?」
そしてわたしを見て、リュウは一言そう言った。
なんの〈大丈夫〉なのか分からないけど、正直大丈夫ではなさそうだ……。



