ダメダメ。気にしちゃダメだ。自分にそんなことをいい聞かせながら、わたしは撮影に臨んだ。
 
 「では撮影入りまーす! 5.4.3.2.1……」と監督の合図で、撮影は始まった。
  
 最初の撮影は、リュウと荒蒔繭那演じる高校生が、美術室で会話をするシーンだ。

 リュウのその表情や仕草は、いつもわたしが見ているリュウではなく、役者としてのリュウそのものだった。

 ……さすがリュウだな。リュウは撮影の時緊張感を一切出さない。緊張しているのかどうかも、分からないくらいだ。

 わたしみたいなペーペーよりも遥かに演技が上手い。引き込まれてしまう。

 そして何よりも、荒蒔繭那も負けてない。ドラマに引っ張りだこなだけある。あの演技力は、素晴らしいなと思った。ドラマの世界観を自分のものにしようとしている。

 ……あのふたりが織りなすドラマの世界観は、きっとあのふたりにしか作れないなと思った。あのふたりだからこそ生まれる、ドラマの雰囲気は最高だった。