「大丈夫だ。特に役作りをすることもない。いつも通りに授業を受けてると思えばいい」
なんてリュウは、優しく言ってくれた。
「……そんなこと、言われても」
不安になるのは仕方ない。初めてだし。だけどそれをうまく伝えられる自信もなかった。
「大丈夫だ。お前は普段学校で過ごしていると思えばいいんだ。 オレがちゃんと見てる」
オレがちゃんと見てる。その一言で、わたしはなんだか救われた気がした。
……リュウのこの優しさが、わたしにとってはかけがえのないものになっていってる気がした。
「リュウ……。ありがと」
「もうすぐ撮影が始まる。準備しておけ」
「……うん」
リュウは打ち合わせがあるからと、そのままスタジオの端の方へ行ってしまった。
「あなたが、リュウの彼女?」
そしたら突然、誰かに声をかけられた。振り返るとそこには……。
「あなたは……。荒蒔繭那、さん?」
主役の荒蒔繭那が、不思議そうに立っていた。



