「……島田、お前はもう、立派な医者だ」
本当はそのセリフで終わるはずだった。 けれどそこで、先輩の俳優さんがアドリブを入れてきたのだ。頭を撫でるという、アドリブを。
わたしはそのアドリブにビックリして、少し目を見開いてしまった。 その瞬間に、監督からカットがかかった。
「モニターチェック入りまーす」
「悪い。さっきアドリブ入れちまった」
と、先輩俳優さんはわたしに言ってきた。いくら演技とはいえ、ちょっと頭を撫でられてビックリした。……そしてちょっと、ドキッとした。
「い、いえ……。大丈夫です」
と答えたけれど、内心ドキドキしてしまって、本当に焦った。
「なでしこさん、こういうアドリブ、初めてだった?」
「え? あ、はい……」
「そっか。ちょっと、ドキドキした?」
と言ってニヤッと笑ったのは、わたしの先輩外科医役の櫻井隆(さくらいたかし)さんだ。櫻井さんは本当に優しくて、いつもわたしに大丈夫?と問い掛けてくれる優しい俳優さんだ。



