役に入り込めというのが、最初はよく分からなかったのだけど、今はよく分かる。リュウの言ってることは、確かにわたしの気持ちを楽にしてくれた。 気持ちを切り替えるのがなかなか大変ではあるけど、リュウのおかげで気持ちも楽になった。
「では、シーン32から撮影開始しまーす!」
「はい」
撮影を開始してから間もなく1ヶ月が経とうとしていた。キャストの皆さんともだいぶ馴染んできて、休憩中もよく話をするようになった。キャストの皆さんが用意してくれたケータリングもすごく美味しいばかりなのだ。 最近では、こうして食べることも楽しみの1つになってきた。
撮影をしていく度に、わたしは先輩女優さんの凄さを実感した。わたしなんてまだ、この世界に入って間もない人間だ。本当に尊敬する方たちばかりだ。
「……島田、よくやった。あの患者を助けようとしたその判断は、間違ってなかったぞ」
「……はい。ありがとうございます」
こうして話すセリフも、今ではちゃんと気持ちを込めれるようになった。



