「ふぅっ……」
まだ緊張している。だけどすぐさま、次のセリフを言葉にして確認した。
「モニターチェックOKでーす! ではシーン5から入りまーす!」
今一度台本を確認し、セリフの確認。毎回そんな感じの繰り返しだ。だけどわたしも、もうデビューからもう2年は経った。それくらい少しは成長しているということを、見せるチャンスだ。
「和泉先生……わたし、やっぱり医者、向いてないのでしょうか?」
「そんなことないわ。誰だって最初から完璧な人はいないわよ。……誰だって最初は、ポンコツ研修医だもの。みんな同じ道を辿って成長いくのよ、立派な医者にね」
これが先輩女優さんとの初めての絡みだった。だけどセリフから伝わってくるのは、その人の優しさと、その人の努力だった。それは、胸の奥深くに感じる気持ちと平行していた。
「……先輩、医者はどうして、こんなにも力不足なんでしょうか」
「医者が出来ることには、限界があるのよ。……仕方ないわ」
そのシーンもカットがかかり、OKをもらえた。



