「では、よーい……。アクション!」
そんな緊張感の中、いざ撮影が始まった。
「先生、待って下さい!わたしたちは医者ですよね?……目の前に助けられる命があるなら、助けるのが医者ではないんですか?」
最初は、わたしが天才外科医役の俳優さんにそう話すシーンだった。異様な緊迫感が漂う中、わたしは最初のセリフを噛まずに言うことが出来た。
「島田、勘違いするな。医者だって一人の人間だ。医者だからといって、患者全員を助けられる訳じゃない。……助けられるヤツから優先して助ける。だけど医者だって万能じゃない。すべての患者を助けられるなら、最初から医者なんて必要ないんだよ」
先輩俳優さんのその言葉は、本当に役に入り込んでいるかのような感覚にさせられた。セリフの1つ1つに魂を感じて、やっぱり芸能界の差というのを感じた瞬間だった。
「はい!カーット! モニターチェック入りまーす」
モニターチェックをしている間、少しで緊張を解そうとわたしは水を飲んだ。



