リュウに出会わなければ、あの時スキャンダルに巻き込まれるようなことがなければ、わたしは今こんなふうになっていない。
今だってきっと、大好きなアニメを見て、大好きなレンのグッズを集めて、DVDを見ては目の保養をしていたに違いない。……そんなアニメオタクな自分が、まさかこんなモデルの世界で活躍できる日が来るなんて、誰が想像もしただろうか。
きっと誰も想像出来なかっただろう。……わたしも、そしてリュウだって。社長だってそうだ。こんなふうに色々なことを出来る芸能の世界で、活躍出来ることは、本当にありがたい。
そんなある日、わたしの元にある話が舞い込んできた。
「なでしこさん、ちょっといいですか?」
「どうしたの?久喜(くき)」
わたしのマネージャー、久喜(くき)はわたしにそう話しかけた。
「なでしこさんに朗報ですよ?」
「朗報? 何?」
わたしはメイクをしてもらいながら、久喜のほうに視線を向けた。
「なでしこさんに、声優の話が来てますよ?」