「山桜なでしこ」

 「え?」

 「山桜なでしこ。って言うんだ?」
  
 急に隣の席から見つめられて、目を逸らせなくなった。

 「……はい。そうです」

 「俺は馬渕佑樹(まぶちゆうき)と言います。改めて、よろしくお願いします。 俺のことは佑樹と呼んでもらっていいですよ」

 彼はそう言うと、ニコニコと笑っていた。

 「……はぁ」

 いきなり呼び捨て?はちょっと……。抵抗、あるかな……。

 「ねぇ、なでしこちゃんって呼んでもいい?」

 と首を傾げながら聞かれた。……え、こういう時ってなんて言えばいいんだろう?

 「じゃあ、なでしこちゃんって呼ぶね?」

 「えっ」

 え、半強制的……!? ちょっと強引的なの?

 「ダメ?」

 「…………。どうぞ」

 ダメ?と聞かれても、ダメと言えるわけはない……。編入してきた身だし。

 「じゃあなでしこちゃん、何か分からないことがあれば何でも聞いてね?教えれる程度だけど、教えるから」