李世先輩との「賭け」に負けた(?)、2週間後の休日。


5月に入り、少しずつ暑さが増している日差しを一身に受けながら、私は観覧席で先輩の姿を探していた。


どういう状況かっていうと、賭けに勝った先輩の「お願い」を叶えるためだ。






あの日、李世先輩は――。





「陽茉ちゃん、見ててくれてありがとう。応援してくれたおかげで、良い走りができたよ」


「お疲れさまでした!あの、本当に、すごかったです」




私のたどたどしい言葉じゃ、あの感動は伝えられない……。



もどかしい思いで先輩を見つめていると、優しく微笑んだ。



「ううん、ちゃんと伝わってるよ。ありがとう」



梓ちゃんや李世先輩のこの笑顔に、私はどれほど救われていることだろう。




「それで、肝心な『お願い』のことなんだけど」

「は、はいっ」



――なんだか胸が、ドキドキする……。