ぼんやりとその場に突っ立っていると、体育館の床にリズムよく打ち付けられるボールの音が響いた。


いけない、もう始まってるみたい。



慌てて表に回ってのぞきこむと、一部の部員がボールをついていたけど、江真くんはまだ準備運動をしていた。



私と目が合うと、目じりを下げて朗らかに笑う。



その笑顔に、さっき受けた胸の痛みが、和らいでいくのを感じた。



「陽茉、キャットウォークに登るといいよ。オレ、3P決めてみせるから、見てて」




江真くんに勧められた通りにキャットウォークへ上がって、本格的に始まった練習の様子を眺める。



次期エースと言われているだけあって、身のこなし方が他の部員と比べ、頭一つ抜けている。


フェイントをかけて二人がかりのディフェンスを突破し、そのままシュートを決めたときには、カッコよくて思わず声が出そうになった。


宣言通り3Pを決めたときには、私に向かってピースしてくれて。


正直、特別な感じがして、うれしい。




――江真くんとこんな関係でいられるのも、あと少しか。



改めて江真くんの告白を受け入れたら、こんな時間がずっと続くってことだよね。



それってすごく、幸せなんじゃないかな。







幸せ……だよね?




少なくとも、私にとっては――。