「若菜は朝はパン派でしょ?俺と一緒だね」

圭さんがそう言いながら私の目の前に朝食を置く。そんなことまで盗聴されていたんだ。少し体が震えた気がする。

私の好きないちごジャムの乗ったトースト、ロメインレタスのシーザーサラダ、ハムエッグが目の前に並べられる。どれもおいしそうだ。そういえば、圭さんは料理を作るのが好きでよくTwitterとかにも投稿してたな。食べてみたいって写真を見るたび思ったけど、こんな形で叶うなんて……。

「お昼は若菜の好きなパスタを作ってあげるね。鮭とブロッコリーのクリームパスタにしようかな。ほら、若菜が前に食べておいしかったってツイートしてたでしょ?」

圭さんがニコニコしながら言う。私は「ありがとうございます」と頭を軽く下げ、冷めないうちに食べようと手を合わせ、トーストに口をつけた。

「おいしい……です」

私がそう言うと、圭さんは「よかった。嬉しい」と喜ぶ。その喜び方はまるで、子どもがクリスマスにずっと欲しかったものをもらえたような時みたいだった。芸能人の食レポみたいなことは何一つ言ってないのに、どうしてこんなにも喜んでくれるんだろう?