寝室から出てリビングへと向かう。動く時、ジャラジャラと鎖の音がしないことが嬉しい。手足に冷たい枷の感触がないことが、圭さんや牧さんではない人が目の前にいることが、自由になれた証だ。

リビングのテーブルには、おいしそうな朝ご飯が並べられている。ご飯にお味噌汁、焼き魚に漬け物とおいしそうな和食の朝ご飯だ。

「いただきます!」

二人で手を合わせ、同時に言う。私は早速ご飯を口に入れ、お味噌汁を飲んだ。自由になって食べるご飯は特別においしい。思わず涙で目の前がぼやけてしまった。

「大丈夫ですか?」

お巡りさんが心配げに訊ね、私は「すみません、自由になれたことが嬉しくて……」と慌てて言う。このお巡りさんには迷惑をかけてばかりだ。

朝ご飯を食べながら、お互いにきちんと自己紹介をした。お巡りさんの名前、昨日言われたと思うけど覚えられなかったからきちんと頭に叩き込む。名前は黒岩秀さん。よし、ちゃんと覚えた。お礼をきちんとしたいからね。