「ちょっと稲垣。その脂はジャンケンよ。そっちの鍋もちゃんと見てるからね。ネコババは許さないわよ。最後においしいのはソレなんだから」
「うわ、お父さんみたい」
 思わずつぶやいたら、あからさまににらまれた。
 (やっぱり)
 めっちゃ怒ってるよ。
 わたしのせいじゃないのになぁ。
 わたしは必死で探したよ?
 ふたりを逃がす前にウォーリーに見つかってしまったのは、単なる不運。
 結果、岡本がさらに、さらに、不機嫌になる事態になったわけだけど。
 文句があるなら本人に言ったらいいじゃん。
 (ほぉら)
 騒動の主たちは、明日のことなんてどうでもいい顔で、楽しくお食事中じゃないの。
「おーい、肉、足りないぞー。だれか女子にもらってこいよ」
 え?
 ばかなことを言うのはだれ?
 いまの岡本に、そんなわがままが通用すると思ってるの?
「おれ、行ってこようか?」
 うわ。
 やめなさい、掛居。
 やめなさいってぇぇ。
 岡本に見えないように、後ろ手でぶんぶん帰れと手を振ってやったのに。
 すたすたやってきた掛居は、わたしの座布団の端に膝がのるほどの距離で、わたしと岡本の間に身体をねじこんで。
 のけ反ったわたしの横から岡本に大皿を差しだした。
「岡本さん。欠食児童に愛の手を」