(今日は進路のこと話すヒマなさそうだな……。園長先生、忙しそうだし)

 そんなことを思いながら制服からブルーのギンガムチェックのブラウスとデニムスカート・白いニットに着替えた愛美は、一階に下りておチビちゃんたちがおやつ中の食堂を横切り、台所に入る。

「先生たち、ただいま! わたしもお手伝いします!」

「あら、愛美ちゃん。おかえりなさい。いつも悪いわねえ。――じゃあ、理事会の人たちにお出しするお茶、淹れてもらえる?」

「はーい」

 施設の麻子(まこ)先生にお願いされ、愛美はテキパキと動き始めた。
 急須にお茶っ()を量って入れて、その上からお湯を注ぐ。しばらくすると、いい香りのする美味しい緑茶ができ上がった。

「今日は何人の方が来られてるんですか?」 

「えーっと……、確か九人だったかな。だから、園長先生の分も合わせて一〇(じゅう)人分ね」

「分かりました」

 ということだったので、上等な湯飲みを一〇人分食器棚から出してお盆に()せ、急須から出でき立ての緑茶を淹れていく。

「できました! わたし、運んできます!」

「いいから、愛美ちゃん! ありがとう。あとは(わたし)たちでやるから、部屋で休んでていいわよ。晩ごはんの時間になったら呼ぶから」