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「ただいまぁ……」 

 〈わかば園〉の門をくぐると、愛美は庭で遊んでいた弟妹たちに声をかけた。
 そこにいるのはほとんどが小学生以下の子供たちだけれど、そこに中学一年生の小谷(こたに)涼介(りょうすけ)も交じってサッカーをやっている。

「あ、愛美姉ちゃん! お帰りー」

「……ただいま。ねえリョウちゃん、先生たちは?」

「先生たちは、園長先生の手伝いしてるよ。今日、理事会やってっから」

「そっか。今日、理事会の日だったね。ありがと」

 この施設では毎月の第一水曜日、この〈わかば園〉に寄付をしてくれている理事たちの会合があるのだ。
 ここの子供の中では最年長の愛美は、毎月自主的に園長や他の先生たちの手伝いをしている。――〝手伝い〟といっても、お茶を()れたりするくらいのもので、理事たちの前に出ることはめったにないのだけれど。

「――さて、わたしも着替えて手伝おう」

 玄関で靴を脱ぎ、散らかっている子供たちの靴と一緒に自分の靴も整頓してから、愛美は階段を上がって二階の六号室に向かった。
 ここは彼女の一人部屋ではなく、他に五人の幼い弟妹たちも一緒に暮らしている部屋。

 幸い、この部屋のおチビちゃんたちは食堂でおやつの時間らしく、部屋には誰もいなかった。