「進学したいなあ……」

 愛美はまた一つため息をつく。高校に進学することが普通じゃないなんて――。
 学校の同級生はみんな、当たり前のように「どこの高校に行く?」という話をしているのに。

(どうしてわたしには、お父さんとお母さんがいないんだろう?)

 実の両親は亡くなっているので仕方ないとしても、義理の両親とか。誰か引き取ってくれる親戚とかでもいてくれたら……。

「――はあ……。帰ろう」

 悩んでいても仕方ない。施設では優しい園長先生や先生たちや、〝弟妹(きょうだい)たち〟が待っているのだ。
 様々な理由で〈わかば園〉で暮らしている子供たち。愛美はその中で一番のお姉さん。血は繋がっていないけれど、みんな同じ施設(いえ)に暮らす弟たち・妹たちだ。
 
 大して荷物は入っていないけれど、心もち重いスクールバッグを肩にかけ直し、愛美は重い足取りでまた畦道を歩き始めた――。