施設で育ったので、好き嫌いなんて言っていられなかった。幸い、生まれつき食品アレルギーもないようだし。

「っていうか愛美とあたし、今日ハンバーグ二回目だね。お昼も食べてきたじゃん?」

「……あ。そうだった」

 お昼に品川で食べたハンバーグも美味しかった。でも、家庭のお母さんハンバーグはまた別である。

「あら、そうだったの? ゴメンなさいねえ、気が利かなくて。でもね、ウチのは煮込みハンバーグだから、また違うと思うわよ?」

「お母さんの煮込みハンバーグはソースが天下一品なんだよ。愛美も気に入ると思う」

「わあ、楽しみ☆ じゃあ、わたしもお手伝いします」

 お呼ばれした身とはいえ、上げ(ぜん)()え膳では申し訳ない。それに、実は料理が得意な愛美である。

「じゃ、あたしも手伝うよ」

「そうねえ。愛美ちゃんはともかく、さやかはこの家の子なんだから、手伝ってもらわなきゃね」

「……お母さーん、それ言う?」

 母と娘の何気ない会話だけれど、それだけでも愛美は微笑ましく感じるのだった。

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 ――翌日の午後、治樹が言っていた通り、クリスマスパーティーが開催された。
 とはいっても、牧村家ではスペースが限られるので、自宅から徒歩数分のところにある〈作業服のマキムラ〉の工場にある梱包スペースを借り切って、である。

 この縦長の広いスペースをキレイに片付け、飾りつけし、クリスマスツリーを飾ったらクリスマスパーティーの会場の出来上がり。
「中学生以下のコ限定」とさやかが言っていたわりには、二十人近い子供たちが集まって、とても賑やかになった。

「――やあやあ、みんな。サンタのお兄さんだよ。みんないい子にしてるかね?」

 そこへ、サンタクロースのコスプレをした治樹が、白い大きな袋を担いで参上した。ミニスカサンタのコスプレをした愛美と、トナカイの着ぐるみでコスプレをしたさやかも一緒である。