藤永君がなにを言ったか声が小さくて聞こえなかったけど。
やっぱりどうしても、隣の朱ちゃんの存在が気になってボウリングにまったく集中できなくなっていた。
さっき藤永君に教わってコツ掴めたはずなのに、あれからずっとガター行きだよ……。
空になったクリームソーダを見て悲しくなってきた。
「私ちょっと飲み物買ってくるね」
「じゃあ俺も一緒に行こうかな。ちょうどお茶なくなったし。
皆もなにか飲む?」
気遣い屋さんの藤永君が皆に聞いて回り、「行こうか」と私に声をかける。
「おい、あの男、優と二人でどこか行くけど、抜け出すきか??
いくら優が可愛いからって、手が早すぎだろ。
やっぱ男ってサイテーよ、狼だわ」
「気色悪い女声だしてるとこ悪いけど、荷物あるから抜け出さないと思うし、振ったのは朱光さんでしょ。
なにをそんな気にしてるんですか」
「俺は振ってない、返事してないだけ。」
「中途半端だと嫌われちゃうよ。
俺みたいに好きも嫌いもハッキリしなきゃね」
「桜木さんはハッキリしすぎだと思うが。
つか優の可愛さを堪能していいのは俺だけのはずなのに、なんでアイツの隣に他の男がいんの??
えっ、俺もしかして死んでる??死んでるの??」
「もう駄目だこの人。
桜木さん、ふたりで対決します?」
「アリ。雪ちゃん、ボコボコにしてやんよ。」
「ボウリングの話ですけど。」



