青薔薇の至愛




「優、なにか食べるか?」


ザワザワと人の声が纏わりついてくる人混みの中で、廊下を歩いていると、朱ちゃんが横目で私を見ながら言う。


「……」


「……ゆう?聞いてる」


「あっ!ご、ごめんね、えっと、たこ焼き……かな?」


「なんだよ『かな』って」



少し呆れ顔で笑う朱ちゃんが、私の背中に軽く触れて、前からやってくる人にぶつからないよう誘導し始める。


……朱ちゃんってこういうこと自然にできちゃうからモテるんだろうな~。


さっきから横を通りすぎる女の人がチラチラと朱ちゃんを恍惚の表情で見るから、気が気じゃない。



「……朱ちゃん」


「ん?」


「手……」


「手?」



繋いでいいのかな。



いつもなら、きっと勢いで朱ちゃんの手を握れるのに。


学校で、人の目もある中で繋ぐのにはすごく勇気がいる。


口をパクパクとさせながら、なぜか顔が熱くなると。


朱ちゃんは「わっかりやすいなー、優乃」とケラケラ笑って、私の手を握ってくれた。