カレシとお付き合い② 森君と杏珠



 私が森君にしがみついたまま離れないから、取りあえずリビングのソファーに2人で座らされて、お母さんは「もうわかったから、すみませんね」と森君に謝って、何だかあきらめて、飲み物とか軽くパンとか置いて2人にしてくれた。

 あんまり泣いたから、顔がもう、今更あげられないわ⋯⋯ 。
 ひどい顔になってる、
でも、森君が見たい⋯⋯ 。


「私、サエキさんが森くんのトクベツだなって思って」


って話したら、森君が、


「ん? 」


と言った。


「だから、サエキさんが⋯⋯ 」
「誰のこと? 知らないな」


と、全くスッキリした顔で微笑んだ。

 怖い⋯⋯ 。

 あまりに見事なスルーで、その笑顔も、全くの感情のなさも⋯⋯ 。

 うわ、わっ、マジで怖⋯⋯ 。

 本当に怒ったら、森君てこうなるんだ⋯⋯ 。

 なので、サエキの事は言わずに続けた。


「えっと、だから私は、どんな事も一緒に乗り越えたり、解決したいっていうか⋯⋯ 。私に一線引かないでほしくて⋯⋯ 」
「線なんて、どこにあんの? 」
「えっ、、、」


 森君は言った先から、私を膝に乗せて、ギューと抱きしめてきた。


「ないよ? 線? 
それとも、もっと1つになりたいの? 」
「やっ、そんな意味じゃないよ!
心の距離っていうか!
私の全部丸ごと見てほしくて、森くんの全部も見せて欲しいって、、、」


 森君はにっこりと微笑んだ。


「積極的だなんだね、あんじゅ。
もちろんいいよ。
嬉しいな。
ごめんね、ずっと嫌な思いさせて。
あんじゅははっきり言わないと分からないみたいだから、オレの気持ち全部話して、これからはちゃんと思い知らせてあげるね」


 森君は、すごく嬉しそうに、私のブラウスの1番上のボタンを外した。


「!」


 ちょっ!
 何⁈


「お互い、全部、見せるんでしょ? 」
「!!! 」


えっ、そんな、すごい意味じゃないよ、
うわ、すごいどきどきしたよ⋯⋯ 、


「ふふ」


と森君は手を止めて、私を腕の中で優しく優しく抱きしめた。
 私の肩に頭を乗せてきて、耳元で低く嬉しそうに笑った。


「あんじゅ」


耳に直接言われる。


「好きだよ」


 それから、耳とかほっぺたに、唇やら、鼻やら、森君の頬があたる。

 また、涙が出てきた。


「うん、私も。
森君。私もだよ。
おかしくなりそうなぐらい、その、森君のこと、好きなんだ」


と彼の耳元で私も言った。

 間近に見える彼の顔。

見た事ないぐらい、溶けそうに嬉しそうに、

 あっ、

 これ。

 辻本君が、紬ちゃんを見る時と同じ⋯⋯ 。

と、彼の目を見て思った。

 それから、彼の顔が近くにきて、間近になって、これ以上ないぐらい近づく、

 唇が優しく唇に触れて、何度も何度も。

 彼の大きな手が、頭に、頬に、肩にふれる。

 私も、絶対離さないんだ、と、森君のシャツを握って、彼の腕を掴む。

 体中の力がぬけて、私の全部を森君にあずけてる。
 心だけじゃなくて、体も。

 あ、こーゆー事なのか。

 彼氏とお付き合い

 身も心も。
 丸ごとの私。



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