カレシとお付き合い② 森君と杏珠




迷ってる暇なんてない、

ぐるっと見て、屋根まで張り出してる枝を伝って、夢中だった、高さなんてちゃんと見てなかった、枝の太さだって、ぐらぐらして、手足に擦り傷ができたけど、必死の時ってすごい頑張れる、何とか木の幹までたどり着いた。

屋根から見えなさそうだった。

電話、

落ち着いて、

震えてたら落とす、注意深く、

手が動かなくて、ボタンが押せないぐらい、電源を押して、認証したら、森君の画面が開いたままだった、通話をおす、ワンコールで慌てた声の森君が出た、


{あんじゅ?]


涙がブワーーーと出て、声が震える、


[助けて、]


かすれた声しか出ない、


[助けて森君、用具しつ⋯⋯ 助けて]
[ヤバい? ]


と聞かれたので、


[間に合わなかったら一生会えなく、なる、、、警察よんでほし、、、]


と何とか答えたら、


[大丈夫だよ]


と優しく言われた。

いや、大丈夫じゃないんだわ、とボロボロ泣いてたら、数秒後にすごい音が鳴り始めた。
学校中に、ベルのような警報器の音だった、ご近所の皆さん、て感じの音。

木の中にいるから、様子がわからないけど、こんな音がしてるんだから、その男子たち逃げてよ!

森君が、


[どこにいるの? ]


と落ち着いて聞いてくれたので、嗚咽で喋れないけど[外の木の上、]と何とか切れ切れに言って、後は、泣くのが止められなかった。

 泣いてたら、用具室のあたりに人が集まってきたみたい、って、
私は裏の木の上だからよくわかんない、
声がするような感じってかんじ、
 屋根に戻ろうか、その方が発見されやすい、
でも、いざ見たら、よくこんなところ伝ってきたなって、高さ半端ないし、枝細い、戻れない、信じられない、


[近くにいるよ。外の木? どこ? ]


と、また優しい声がした。


[うっ、うっ、うっ、]


だめだ、喋れない


[うっうっ、うら⋯⋯ がわ]


声ほどには落ち着いてない、慌てたような音が、電話越しにガサガサしている。


[あんじゅ? ]


 私結構な場所にいるのが分かった。

 森君がはるか下の方に見えたから。

 彼は用具室の外をぐるっとまわって、山側にきて、そこから下は山の斜面だよ、みたいな端のところに来てくれたんだけど、私は斜面を下ったところに生えてる木の、結果すごい高いところに張り付いてた。

 探してくれてる森君に、電話で「うえ〜、」て叫んだら、ばっと彼は上を見て、私と目があった。

 森君は髪が乱れていて、シャツも出ていて、ネクタイも服も乱れて、すごく慌ててた。
私を見て、ほっとしてから、「高⋯⋯ 」っと呟いて、髪をかきあげた。

 電話口は落ち着いてる声だけど、森君、全然違う様子だよ、
こんな慌てた森君、想像も出来なかった。

 でも、やっぱり私に話す声は優しく落ち着いてて、


[消防呼ぶね。落ちないでよ。待ってて]


と柔らかく言った。