迷ってる暇なんてない、
ぐるっと見て、屋根まで張り出してる枝を伝って、夢中だった、高さなんてちゃんと見てなかった、枝の太さだって、ぐらぐらして、手足に擦り傷ができたけど、必死の時ってすごい頑張れる、何とか木の幹までたどり着いた。
屋根から見えなさそうだった。
電話、
落ち着いて、
震えてたら落とす、注意深く、
手が動かなくて、ボタンが押せないぐらい、電源を押して、認証したら、森君の画面が開いたままだった、通話をおす、ワンコールで慌てた声の森君が出た、
{あんじゅ?]
涙がブワーーーと出て、声が震える、
[助けて、]
かすれた声しか出ない、
[助けて森君、用具しつ⋯⋯ 助けて]
[ヤバい? ]
と聞かれたので、
[間に合わなかったら一生会えなく、なる、、、警察よんでほし、、、]
と何とか答えたら、
[大丈夫だよ]
と優しく言われた。
いや、大丈夫じゃないんだわ、とボロボロ泣いてたら、数秒後にすごい音が鳴り始めた。
学校中に、ベルのような警報器の音だった、ご近所の皆さん、て感じの音。
木の中にいるから、様子がわからないけど、こんな音がしてるんだから、その男子たち逃げてよ!
森君が、
[どこにいるの? ]
と落ち着いて聞いてくれたので、嗚咽で喋れないけど[外の木の上、]と何とか切れ切れに言って、後は、泣くのが止められなかった。
泣いてたら、用具室のあたりに人が集まってきたみたい、って、
私は裏の木の上だからよくわかんない、
声がするような感じってかんじ、
屋根に戻ろうか、その方が発見されやすい、
でも、いざ見たら、よくこんなところ伝ってきたなって、高さ半端ないし、枝細い、戻れない、信じられない、
[近くにいるよ。外の木? どこ? ]
と、また優しい声がした。
[うっ、うっ、うっ、]
だめだ、喋れない
[うっうっ、うら⋯⋯ がわ]
声ほどには落ち着いてない、慌てたような音が、電話越しにガサガサしている。
[あんじゅ? ]
私結構な場所にいるのが分かった。
森君がはるか下の方に見えたから。
彼は用具室の外をぐるっとまわって、山側にきて、そこから下は山の斜面だよ、みたいな端のところに来てくれたんだけど、私は斜面を下ったところに生えてる木の、結果すごい高いところに張り付いてた。
探してくれてる森君に、電話で「うえ〜、」て叫んだら、ばっと彼は上を見て、私と目があった。
森君は髪が乱れていて、シャツも出ていて、ネクタイも服も乱れて、すごく慌ててた。
私を見て、ほっとしてから、「高⋯⋯ 」っと呟いて、髪をかきあげた。
電話口は落ち着いてる声だけど、森君、全然違う様子だよ、
こんな慌てた森君、想像も出来なかった。
でも、やっぱり私に話す声は優しく落ち着いてて、
[消防呼ぶね。落ちないでよ。待ってて]
と柔らかく言った。


