エリート御曹司は淫らな執愛を容赦しない~初夜に繋がる結婚事情~

「もう一度、俺とのこと考えてもらえませんか?」

考える余地なんかないわよ、この……!
次の瞬間、私たちのいる個室の襖がタンと音をたてて勢いよく開いた。

「愛菜さん、お迎えにあがりました」

そこにいたのは左門優雅だった。
あなた、何やってんの……と思うより、何より、私は優雅の存在にホッとしてしまっていた。

しかし、安堵は一瞬。よく見れば仁王立ちの優雅は、びっくりするくらい凶暴な笑顔をしていた。
これは、めちゃくちゃ怒ってない?

「小林ヒカルさん、僕の婚約者を連れ出すとはいい度胸ですね」
「え……あ……」

小林くんは突然乱入してきた迫力のあるイケメンが、私の部下であることは理解している。しかし、彼が発する怒気と婚約者の単語に凍りついているようだ。

優雅の表情から笑顔が掻き消えた。底冷えのする声が響く。

「愛菜さんを傷つけたおまえは、本来彼女の視界に入ることすら許されない。それをぬけぬけと……」
「いや、俺は……その……」
「この人は優しいから、おまえに何もしない。だが、俺は違うぞ。おまえもおまえの頭の悪い恋人も、おまえの家族まで破滅させてやる準備はある。ほら、そんな恐怖に震えている暇があるなら、今すぐこの人に謝罪して消え失せろ」

見たことがないくらい怒ってる……。
この前のセクハラ社長の件よりずっとずっと怒ってる!
ああ、やっぱり普段の柔らかな物腰と紳士的な敬語は、この本性を隠すためのものだったのね。絶対裏の顔があるとは思ってたけど、とんでもなく凶悪なのが隠れてるじゃない。

震えあがって身動きの取れない小林くん。今にも獲物を食い殺しそうな優雅。
私は迷うことなく立ち上がった。そして優雅に抱きつくように寄り添い、その胸にぺたっと頬を押し当てた。