「本当にすみませんでした。古道さん」
「ああ、いいのよ」
待ちに待っていた謝罪だ。そのためにここにきた。それなのに、釈然としない。
「俺、古道さんに惹かれていたんだと思います」
小林くんがとっておきの言葉というように私の目を真剣に見つめてくる。
「栗原さんに好意を向けられて無碍にできなかった。俺は優しさの使い方を間違ってしまったんでしょう。そして、本当に好きな人を傷つけて失ってしまった」
小林くんは眉を寄せ、苦しげに顔を歪めて言う。すごく悦に入った口調だ。
「栗原さんはすごく我儘で、嫉妬深くて、要は子どもなんですよ。古道さんを想いながら、一時でも彼女の気持ちに応えたいと思いやりを見せた俺が馬鹿でした」
うーん、あれ? しかも話が変な方向によじれてきてるぞ。私はジョッキに唇をつけて、目を逸らす。
「恋人の悪口を言うのはよくないわよ。特に異性の前で」
一応言っておく。小林くんは首を振った。
「俺は彼女と付き合ったこと自体、間違いだったと思っています」
その口調は、夢中で私をデートに誘っていた頃の口調だ。ああ、思い出してしまった。彼はこういう子犬のような熱心さで私に迫ったのだ。
「古道さんのご実家のことは知りませんでした。でも、この再会は奇跡だと思ってます。俺、今でも古道さんのことを想ってるんです」
私は喉の奥から力ない笑いが溢れてくるのを感じた。
そうかあ、上手くいかない恋人より、地方の名士の令嬢かあ。若さと場の空気で恋人を選んだきみは、今度は逆玉の輿の夢を私に見てるんだね。押せば靡くと思ってるんだね。
逃した魚が思ったより大きかったから、リベンジ狙ってるんだね。
「ああ、いいのよ」
待ちに待っていた謝罪だ。そのためにここにきた。それなのに、釈然としない。
「俺、古道さんに惹かれていたんだと思います」
小林くんがとっておきの言葉というように私の目を真剣に見つめてくる。
「栗原さんに好意を向けられて無碍にできなかった。俺は優しさの使い方を間違ってしまったんでしょう。そして、本当に好きな人を傷つけて失ってしまった」
小林くんは眉を寄せ、苦しげに顔を歪めて言う。すごく悦に入った口調だ。
「栗原さんはすごく我儘で、嫉妬深くて、要は子どもなんですよ。古道さんを想いながら、一時でも彼女の気持ちに応えたいと思いやりを見せた俺が馬鹿でした」
うーん、あれ? しかも話が変な方向によじれてきてるぞ。私はジョッキに唇をつけて、目を逸らす。
「恋人の悪口を言うのはよくないわよ。特に異性の前で」
一応言っておく。小林くんは首を振った。
「俺は彼女と付き合ったこと自体、間違いだったと思っています」
その口調は、夢中で私をデートに誘っていた頃の口調だ。ああ、思い出してしまった。彼はこういう子犬のような熱心さで私に迫ったのだ。
「古道さんのご実家のことは知りませんでした。でも、この再会は奇跡だと思ってます。俺、今でも古道さんのことを想ってるんです」
私は喉の奥から力ない笑いが溢れてくるのを感じた。
そうかあ、上手くいかない恋人より、地方の名士の令嬢かあ。若さと場の空気で恋人を選んだきみは、今度は逆玉の輿の夢を私に見てるんだね。押せば靡くと思ってるんだね。
逃した魚が思ったより大きかったから、リベンジ狙ってるんだね。



