エリート御曹司は淫らな執愛を容赦しない~初夜に繋がる結婚事情~

謝ってもらいたい。
仕事なんて関係ない。今更、小林くんとどうこうなりたいわけでもない。
だけど、私のプライドがずっとあの瞬間から悲鳴をあげている。

【わかりました】

私は完結にメッセージを送り、スマホを置いた。
タイミングがいいのか、悪いのか、優雅が私のデスクに寄ってくる。

「愛菜さん、今日の夜、定時であがれそうですか? 奥様から僕の方に連絡が入っていまして、夕食を一緒にと」

私じゃなくて優雅を誘うあたりに母の思惑を感じる。私は、首を振った。

「先約があるの。母には私から断っておきます」
「小林ヒカルですか?」

間髪入れずに尋ねられ、私は驚いて詰まった。どうしてわかるの? スマホでも見られたかと疑ったけれど、彼はカマをかけただけのようだ。それに反応してしまった私が悪い。
ともかく、この話をここで続けるのは良くなさそうだ。

立ち上がり、オフィスを出ると、優雅が後をついてくる。
非常階段のドアを開け、外階段の踊り場で向き直った。

「あなたが心配するようなことではありませんので。前職の後輩と食事するだけです」
「彼とあなたにあったことを僕が知っていてもですか?」

優雅は微笑んでいた。しかし、目の奥の光だけがぎらっと普段とは違う色を見せている。

「ええ、知っていてもよ」

私も強い口調で答える。気圧されたくない。

「あなたとの婚約を了承したわけじゃない。あなたに私の行動を制限する理由はない」
「そうですね」

優雅は低く言う。