エリート御曹司は淫らな執愛を容赦しない~初夜に繋がる結婚事情~

なんて、思っていた四日目。昼、スマホにメッセージが届いた。

【古道さん、こちらにご連絡してしまいすみません】

小林くんだ。私用携帯ではまだメッセージアプリで繋がっていたのだ。ブロックしておけばよかったなあ。

【今夜、お食事でもいかがですか? 本件で少し相談したいこともあるので】

仕事をちらつかせるのはずるい。そして話の中身も、なんとなく察しがつく。
彼は私と気まずい状態でこの仕事を続けたくないのだろう。そこで旧交を温め、自分が悪くなかったと理解してもらいたくて、私を食事に誘っているに違いない。
無視だ、無視。
私は表向き遺恨がないんだから、それで満足してちょうだい。
そう思いつつ、頭の片隅で考えてしまう。

あの男に謝らせたい。私にあからさまな好意を見せておいて、土壇場で裏切ったことを謝罪させたい。

私は、それなりに嬉しかったのだ。高嶺の花と持ち上げられ、異性の寄りつかない八年間。初めて、私に親愛を見せて寄ってきたのが小林くんだった。少しだけ、彼との未来も想像した。
あの事件のあと、全部全部、私の妄想で勝手な勘違いだったんだって自分に言い聞かせた。小林くんが好意を見せていたんじゃない。私が後輩に言い寄っていただけなんだって。栗原りりかの言うとおり、小林くんはきっと迷惑していたんだって。
だけど、スマホに残る彼からのメッセージはどう客観的に見ても恋のそれ。

【ごはん食べにいきましょう】【古道さんとふたりがいいです】【映画だったら、何が見たいですか?】【デートなんで俺に出させてくださいね】

私は、こんな十代の男女みたいなやりとりに舞い上がり、好意を確信し、裏切られた。