『どうして、古道さんはそんな意地悪ばかり言うんですかぁっ!』

販促グループのオフィスで泣き崩れるのは栗原りりかという二十三歳女子。
ちなみに私は意地悪なんかしていない。強いて言うなら、彼女の企画書に五度目のリテイクを出しただけだ。小林くんと違って、栗原さんは正式に私が指導係として配属以来十カ月面倒を見てきた子。

正直に言うわよ。とんでもなく使えない子。
仕事が遅いのは百歩譲って仕方ない。だけど、詰めが甘い、甘ずぎるから、ミスがたくさん。しかも、必ず私に見せろって言うのに、私をすっ飛ばして上長決済を仰いだり、客先に送ったりしてしまうのだ。当然不備があって、私のところに確認がくる。『なんでそんなことをしたの?』と聞けば、『あ』とか『忘れちゃって』とか要領を得ない答えが返ってくる。

たとえば、私のやり方に疑問や不満があって、『自分のやり方を通したいから古道さんに見せて否定されたくありませんでした!』なんて気概のあることを言ってくれるなら別よ。私だって、誠意を込めて闘うわ。指導係だもの。だけど、この子は違う。なんとなく『まあ、いっか』で仕事している。それがわかるから歯がゆいし、『もっと熱くなんなさいよ、若者がああ!』と腹の中で熱血してる私が叫んでしまうわけだ。

今回の企画書の件は、自由な社風の我が社にはよくある全社員公募のアイディア企画。希望すれば誰でも参加できるけど、必ず上長決済を通してから提出となる。つまりは彼女がやりたいと言えば、私とグループリーダーは仕事外に善意でチェックし、指導しなければならないのだ。
しかし、彼女はどう見ても仕事中に企画を練っている様子。さらには『趣旨理解してる?』といった企画を堂々とあげてくる。これを出したらグループリーダーの面目が潰れてしまうので、私も繰り返し指導する。

……結果が本日だ。