あらあら、年下のホープにまで好かれちゃって、私ってばモッテモテ。そんな余裕ぶった態度で高笑いでもせんばかりの私だったが、心中はそれなりに焦ったり浮かれたりしていた。なにしろ、入社以来高嶺の花扱いだ。社外では自分磨き、社内では仕事、この八年彼氏がいたこともない。
こんなふうに露骨にアプローチをしてくる男は初めて。

ちょうどいいかもしれない。
私の父は北陸の都市で多数のホテルを経営し、地域観光産業をになう実業家。いつかはひとり娘の私に実家に戻り家を継げという要請があるはずである。両親が私に激甘なので、この年まで都内で自由にできているだけだ。

そう、激甘なのが狙い。東京で将来を誓う男性が現れ、それが同じ一流企業のホープであれば、両親は私を連れ戻そうとはしないだろう。
田舎は嫌いじゃない。だけど、長く東京で暮らしていると、帰るのもなあという気分になるのは仕方がないじゃない? こちらで好きな男と好きな仕事をして暮らしていけるなら、それが一番いいもの。両親が部下や親族に会社を売却しても、我が家には資産はたくさん残る。いずれ、老親が亡くなったら土地屋敷を始末し、それを相続すればいい。うん、完璧。

つまり小林くんは私の描く未来予想図にぴったりな男性だった。

ランチはしょっちゅう一緒に行ってるし、アプローチにしか思えない言葉もいっぱいもらっている。私もまんざらではない態度を取ってるし、何度も誘われるから、スケジュールを開けて今度映画にでも行こうと了承だけはした。お正月休みは向こうが実家に帰るというので、じゃあ、デートの予定は一月中かなあなんて思っていた。

そんな一月半ば、事件が起こった。