「……ど、努力って」
「あなたを幸せにし、あなたを守れる男であると、証明する時間がほしいのです」

優雅は私の顔を覗き込み、私ひとりに語り掛ける。ちょっと、親のいる前でポーズなのか本気なのかわからない雰囲気出すのやめて……。

「婚約者として、お傍においていただけませんか? あなたにとって不要な男だと判断がつけば、いつでも切り捨ててください。僕はそれで構いません」

両親がいなければ、私の手を取って言っていたであろう情熱的なセリフ。
でも、なんかすごく裏がありそうに見えるのよ、この男。イケメン詐欺師って感じすらしてくる。

私が今まで仕事で成功してきた理由に、多少なりとも相手の本質を見る力というものは関係していると思う。実業家である父親譲りの観察眼が言ってる。やっぱり左門優雅はちょっと普通じゃない。

……あれ? でもその実業家の父は、この男を買っているんだよね。ってことは? どっちの勘が鈍ってるの?

「愛菜、優雅さんがここまで言ってくれてるのよ」

母が言い、父も少し強めの口調で言う。

「優雅くんは、婿入りをしてくれるんだぞ。未来の社長は愛菜でもいいと言ってくれている。何より、こんな優秀な男は他にいない!」

優雅は綺麗な切れ長の目で私をじっと見つめている。まるで『あなたに従います』と言わんばかりの忠義のある視線。
くう、外堀埋めつつ、逃げる余地がある風を装ってるのがすでに嫌!

「……保留!」

圧力に耐え兼ね、私は怒鳴るように言った。
はっきり断れなかった私の馬鹿!