「君をね、誰にも渡したくなかった。だから、中学の時、強引に、僕達の関係に名前つけたんだ」

 忘れるはずもない。「僕も、同じ。だから、今からぼくらは恋人ってことになるね?」そう言って笑ってくれた君に驚いて、けれども嬉しくて、変な顔をしてしまったあの時。私の言葉に気を遣って、そう返してくれたのだと思っていた。

「どんな形でもね、良かったんだ。君が、僕のそばにいてくれたら、それで、良かった」
「……」
「君は優しいから、僕のわがままに付き合ってくれて……デートとかも、僕が無理矢理連れ出してばっかで、」
「……っ、」
「……その、キス、とかも、僕が求めてばっかで、恋人、だからって、」

 彼は、優しい。そして責任感が強い。だから、幼い頃の私の言葉に囚われて私から離れられなかったのだろうと思っていた。
 デートだって、キスだって、身体を重ねることだって、責任感だとか義務感だとか、そういったものから(おこな)ってくれていたのだと思っていた。
 でも今、彼が吐き出している言葉は、真逆だ。というよりも、私も彼も全く同じことを考え、そして接してきていたのだろう。

「…………っ、ちが、」
「いいよ、大丈夫。分かってたから。別に君を責めてるわけじゃな」
「っ違う、の、」

 物理的にも、精神的にも、離れて三年。
 彼が言葉にしてくれたおかげで知れた真実だった。