「…………あ、」

 本日二度目の、しまった、だ。
 隠すつもりだったかと聞かれたら、そんなことはないのだけれど、声を大にして語るものでもない。

「…………え、と……ごめんね、変なの、見せちゃって」

 目のつかないところに置いておくべきだったと、配慮の足らない自分に呆れながら、気にしないでとメモ書きを受け取ろうとすれば、ぐしゃりと、指が触れるよりもずっと前に、それは彼の手によって握り潰されてしまう。

「変なの、っていう、自覚はあるんだ?」
「……」
「こんな……っ、遺書、みたいなの、」
「……」
「……っなん、で、」
「っ」

 潰された紙はそのままに、彼に両腕を掴まれ、手に持っていたお盆が落ちる。

「生きる、理由がない、って、何?」
「……あ、お、茶」

 さすれば当然、その上にのっていた湯呑みも真っ逆さま。畳だから、割れはしない。けれど、ぱしゃりと彼の足に中身がかかって、彼の靴下はずぶ濡れだ。

「っ茶ァなんてどうでもいい!」

 しかし当の彼は、意に介していない。