最終志望でおちゃらけた生徒へのお仕置きは続くよ続く。
 だけどケツに鞭をくれるのは最終コーナーを回ってからじゃねえの?
 夏から延々ぶたれてちゃサラブレッドだってつぶれるぜ。
 ましておれは駄馬。
 ダバダ~。
 歌いながら我が家の優駿・虎に八つ当たり、決定。


「虎、おかわり」
 3度めの飯要求に虎が壁の時計を見上げて首を振る。
「兄ちゃん、遅刻するよ。いくら夏休みの補講だからって、まずいでしょ」
「誰も気にしねえよ」
「お母さんが気にする。おれ、ちゃんと監督するように言われてるし」
 監督だあ?
 生意気なんだよ、弟のくせに。
「そういや、おまえ、YZ会の夏期講習受けるんだってな? しかも自分の小遣いで。ひとがのんびり風呂に入ってんのに、おふくろが脱衣場で、鼓膜が破れるボリュームで兄弟比較リポートを演説してったぜ」
 査定は全部、虎之介基準だから、おれは完全なる型落ち下位機種だ。
「そんなに楽しいか、勉強って」
「――答えが出せるものって、ラク…じゃない?」
「…………」
 こっちを見もしないで完璧優等生理論。
 気が弱いにもほどがある。