「……いい出会い、あるかな」


私、月沢 哀乃。

今日、高校デビューする。


晴れの高校生とか……関係ないけど。

必死に勉強して、ここまできた。


……会えるかなぁ……


そんな不安が頭をよぎるけど、気にしない。




コンコン
「失礼します」

「あら、月沢さん。今日はよろしく頼むわね」


「はい」

今日、私は新入生代表として「決意」というのをテーマにした作文を読む。

「これが、作文です」

「……なかなかいい文章ね!」

「ありがとうございます」

私は微笑んだ。
作り笑いもあの人が教えてくれたんだ。

「それじゃあ、また後でね」

「はい。失礼します」

校長室を出て、自分の教室に戻る。

確か、クラスは4組。

友達できるかな。
便所飯だけは絶対に嫌……!

ドアを開けて、教室に入る。
すると。


「……あの」

「はい?」

急に話しかけられた。
変な返事しかできなかった……

「……入野 蒼って人知りませんか?」

「……?」

いりの、そう?

……誰?


「……あの?」

「っあ、知りませんっ」


「そうですか……ありがとうございます」

その人はにこりと笑って、自分の席に戻ろうとする。


「まって……」

「?」

こちらを振り返り、不思議そうな顔でこちらを見る知らない子。

これはチャンス……!

「なまえ……教えてください」

「あ!私は南 華奈子……あなたは?」

「私は、月沢 哀乃……です」

「哀乃かぁ。いい名前だね」

「ありがとうございます」

「あの、さ。同い年で同じクラスなんだし、敬語はやめない?」

「いい、んですか?」

「うん!名前も呼び捨てでいこ!」

「はい……あ、うん!」


こんな私に声をかけてくれる人がいるなんて。


1年前だと考えられなかったね。


……それにしても入野蒼ってだれだろ。

気になるなぁ。

彼氏さんというわけでもなさそうだったし。

まぁ、そのうち分かるよねっ!



……この時、私は甘かったんだと思う……



なんで出会っちゃったんだろ。
と後悔することになるのは、また後の話……