嫌味とも取れる言い方に少しだけ胸がモヤっとした。
「あ、ごめん。俺、嫌な言い方したよね」
私の表情を見て、芦屋さんは慌てて謝った。
露骨に顔に出してしまったことを謝る意味を込めて、首を横に振る。
「菜那に非はないよ。ただ羨ましいな、と思っただけなんだ。茶道とかが出来る環境にあることを、さ。俺なんてほとんど学校にすら行けてないから」
年齢上は高校三年生でも、芸能活動が忙しくて学業や普通の高校生のような生活は送れていないのが現状らしい。
それが芸能界を辞めたいと思った理由なのだろうか。
だとしたら芦屋さんはどうして芸能人になろうと思ったのだろう。
移植医療のため、と何かで言っているのを耳にしたことがあったけれど、直接聞ける機会はない。
意を決して聞いてみると、案外普通に答えてくれた。
「俺が芸能界に入ったのは移植医療のためだよ。それと、俺のために親戚中に頭下げてお金の工面をしてくれた親のため。あとは俺と、俺の両親と同じように金銭面に不安を抱えている人たちのために」
国内で臓器提供が受けられず、海外渡航して臓器移植を受ける場合、費用は全額自己負担で、心臓の場合、数億円の費用がかかることから募金活動をするケースが多い。
条件を満たせば、これらの問題は医療費補助制度によりある程度改善されるけれど、どうしても高額にはなってしまう。


