七夕の伝説


正直、初めはそう思った。

でも、芦屋さんのおかげで移植医療が注目されたのは事実だし、心臓移植の経験を踏まえて、同じ境遇の方向けの財団を設立したのには父も感心していた。

だから、人助けをしている芦屋さんを否定したりはしない。


「ただ、同情はしても」


みんなが言うように、芦屋さんのことをカッコいいとか、憧れる、とかいう目では見られない。


「惹かれることはないし、惹かれてはいけないんです」


独り言のように呟いてからハッとする。


「すみません。聞き流してください」


慌てて謝ると、芦屋さんは首を小さく横に振ってからしばらくして、別の質問を投げかけてきた。


「ねえ、嫌なこと思い出させるかもしれないんだけど」


芦屋さんの前置きの言葉に胸が騒つく。

それでも小さく頷くと、芦屋さんも頷いてから言った。


「移植を受けるまで、自分はいつまで生きられるんだろう、って考えたよね?それ考える時って、怖くなかった?」

「もちろん怖かったです」


生と死に関してはあの頃、自覚症状がほとんどなかったから、あまり現実的じゃなくてよく分からなかった。

でも医師と話す両親の表情を見る度、不安と恐怖が胸に渦巻いていた。