にべないオウジ



父がどうしても外せない会食が入って今日は早く帰れないという連絡が来たせいで、母の機嫌まで悪くなってしまった。

せっかく熱々の天麩羅用意して待ってたのに、と口を尖らせながら洗い物をしている。


だけど両親は、少し言い合いになっても絶対次の日に持ち越すことはない。絶対その日中にちゃんと話して、明日には仲直りをしている。


「ママ」

「何?ねえ透子ちゃん、パパどう思う?社長なんだったらもっと事前にスケジュール把握しとけっての。そう思わない?」

「うん、思う。あのね、ちょっと出てきていい?」

「ええ?」


母は怪訝な顔をして、時計を見た。


「ダメよ。どこ行くの?もう8時よ?こんな夜に女の子が一人で出歩くなんて危ないわ」

「工藤さんとこ」

「工藤さん?何しに?」

「喧嘩は翌日に持ち込むなって、前にママが言ってたから」


会えるかどうかも分からない。オウくんとは連絡先を交換したけど、一度たりとも連絡を取り合ったことはない。

だけどこのまま家に居たって、オウくんのことしか考えられないし、頭がぐちゃぐちゃになるだけだ。


ここから工藤家はそんなに遠くない。

歩いて5分くらい。私が歩いたら8分くらい。

オウくんは何故か一人暮らしをしない。ずっと小学校の時から、同じ家。