あたしはあの頃からコンプレックスの塊だった。
 小学校行くか行かないかぐらいの年齢で、すでに自分が不細工な自覚はしていた。
 だって、違うんだもん。男の子からの扱いが、あたしだけ、違う。

(かわいい子とはやっぱ、別の扱いをされてる)

 あたしみたいにばい菌扱いはされない。
 
「黒野がきたぞ」
「やっぱブスだなぁ」
「……はあ」

 こんな風に、直接悪口も言われない。

「二つ結びとかかわいい子しか似合わないって」
「ぶりっ子―」
「…………」

 だけどあたしは反論しないまま、それを無視していた。

 
 子供心にあきらめていたから。
 あたしは普通の顔ですらないんだと。
 だって他の子はいじめられてないし。
 特別あたしが醜いんだ。
 そんなんだから、気づけば悟るよね。そりゃね。

 きっとあたしはブスだから、永遠に愛されないんだろうなって。
 割り切って言い聞かせて。そうやって心を凍らせないと耐えれなかった。

(泣き叫んだら、さらに笑われるだけだし、おばあちゃんも困るし)

 お前のくせにとか。 
 何様のつもりだとか。
 さらに罵倒を喰らうだけだから。 
 しかたないんだよ。
 事実なんだからさ。

 自分のルックスが悪いのは事実だから、受け入れないと。

 今思えば、なんて夢のない子供だって思うけど。
 きっと永遠にそういう扱いが続くのを覚悟していたから。

 あたしは性別は女の子だけど、扱いは『女の子』にはなれないんだろうなって。

 そんな予感がひしひししていた。