素直になりたい。

「えっ?ちょ、ちょっと、鷲尾さん!」

「まだエンディング終わってないよ!」


舞台袖にいたクラスメートに心配されながらも私は駆けた。

黒い衣装と悪役メイクに蝕まれ、私の心までカラスのように真っ黒く、邪悪になってしまいそう。

走っても走っても走っても

この胸に迫り来る思いは消えなくて

振り払えなくて

助けてほしいと願っても

願いは届かない。

私は人気のないあの資料室に飛び込んだ。