俺は一目見てすぐわかったのに。
それだけ、この子はあの時消しゴムを貸した男のことなんて、なんとも思ってなかったってことだよな。
「……えっと、同じクラス、だよな?」
「あっ、はい、A組ですっ」
「俺、八木澤怜央っていいます。
えっと…キミは名前、なんていうの?」
受験の時みたいにピリピリしてないから、自然に名前を聞く流れに持っていけた!
よくやったぞ俺!と心の中でガッツポーズした時。
「安木初っていいます。
『安い木』に、『初めて』って書いて『うい』です」
「安木…さん」
やすき……
そう聞いて、ピンときてしまった。
消しゴムに書かれた、『すき』の意味が。



