八木澤くんは不器用に想う





そして迎えた、高校の入学式。



受付でもらったプリントには、俺のクラスはA組と書かれていた。



『八木澤』だから、小学生の時から出席番号はいつも後ろの方。



体育館に並べられた椅子。俺の席は、やっぱり後ろの方だ。



プリントに書いてある番号のところに向かうと。



……俺の番号の椅子に、誰か座ってんだけど?



俺は社交的ではない。話したこともない人に声をかけるのは、得意じゃない。むしろ苦手だ。


「席間違えてますよ」って言うだけ。でも、相手が気を悪くしたらどうしよう。



とりあえず近付いて、わざとらしくプリントと椅子に貼られた番号を見比べながら「あの」って声をかけた。