雨で体が冷えて、鼻をズッとすすったら、
八木澤くんが「…泣くなよ」って頭を撫でてきた。
「……泣いてないよ。寒いだけ」
「……安木。
もしかしてあの日……公園でずっと待ってた…?」
小さくうんって頷いてから、
八木澤くんが自分を責めないように、「でも」って言葉を繋げた。
「ずっとじゃないよ。
東雲くんが、止めてくれたから」
「……孝弥といたの?」
「東雲くん、最初から“八木澤くんは来ないよ”って言ってたけど、
私が『待つ』って聞かなかったから…。
雨が降るまでは一緒に待ってあげるって、雨が降り始めたら絶対に帰るんだよって言って…隣にいてくれた」
「……だから次の日風邪ひいたのか。
……ごめん、俺のせいで」
「……ううん。
勝手に待ってたの、私だから」
最初から東雲くんの言うこと聞いてれば、風邪なんてひかなかった。
八木澤くんのせいじゃない。



