さすが東雲くん…。嘘ついても全部お見通しか。
「……怜央のことなんだろ?」
「…え…」
「柳さんにぶたれたの。
怜央が原因のことなんでしょ?」
東雲くんが私の前に座って、椅子を寄せる。
頬に湿布を貼ってくれて、そこにそっと手を添えてきた。
「……痛かった?」
「腫れるくらいには、痛かったです」
「……だよね」
湿布の上から、頬を撫でられる。
その後、東雲くんの親指が目尻をなぞった。
「……東雲くん?」
「……笑わないね」
「え?」
「柳さんが来てから
俺が好きな初ちゃんの笑顔、見てない」
悲しそうな顔で言う東雲くん。
目尻を撫でられてふと、お祭りで東雲くんに言われたことを思い出した。
『安木さんの、笑った時に目尻にシワができるとこ好きだよ』
……そういえば
最近そんな風に笑ったこと、なかったかも。



