「本当にデートじゃないから」 「…本当に?」 「本当です」 疑いの目を向けてくるお父さんを相手にしたらキリがないと思って、 「着替えてくる」って言って自分の部屋へ逃げた。 部屋着に着替えようと制服を脱ぐと、 カーディガンのポケットからポトリと何かが落ちた。 「あ、消しゴム」 帰り際、机の引き出しの中に忘れてたことに気付いたけど、 カバンからペンケースを出すのが面倒くさくて、ポケットに入れたんだった。 半分に割れた、消しゴム。