「いいわよ!」
「へっ?」
「なぁに?」


いや。なんてゆうか、こんなに簡単に許して貰えるだなんて想像もしていなかったから、ポカンとしてしまう。


「何でもない……」
「で、私は何をしたら良いわけ?」
「とりあえずは、親に許しを貰ったら名刺の電話番号に連絡するように言われている……」


大切に閉まっていた名刺を取り出すと、母親に差し出した。


「私が連絡するから……」


それだけ言うと、険しい表情のままでスマホを弄る母を見守る。


いつもならふてぶてしい態度の母が、電話が繋がると丁寧にあいさつした事にビックリだ。


話はトントン拍子に進み、メイク、マナー、ウォーキングのレッスンをして行く。


何にも持ってない汚れた石ころみたいな私は、きっと希望を探していたのだと思う。


あの時。
それは、スカウトされた瞬間。


自分なんかでもモデルになれると思った、瞬間に私は自分の価値を認められた気がしたんだ。


学校に通いながらのレッスンは時間を割くが、それはなんの苦痛でもない。


何もかもを忘れられる、夢のような時間。


モデルになる道。


それは、私に生きる意味を初めて教えてくれたのかも知れない。