喫茶店で疲れを癒すと、店を出て歩き始める。


服屋を見付けて入ろうとした瞬間だった。


「すいません!お時間有りますか?」


急に声を掛けられ、身構える。


声を掛け出来たのは清潔感の有る、スーツ姿の真面目そうな男性だ。


私、なんかしたかな?


「はい……」
「モデルに興味は有りませんか?」
「え……?」


正直、自分がモデルになるだなんて大それた事、妄想ですら考えた事が無い。


無かったはずなのに__


今の私の脳裏は、自己欲求を満たされたい願望で埋め尽くされてる。


これ以上否定されたくない
誰かに認められたい
仕事が欲しい


「モデルに興味は無いかなと思って、声を掛けました」
「モデル……。私でも出来ますか……?」


そう問い掛けると、胸ポケットから名刺入れを取り出した。


名刺だなんて大人だなぁ。なんて思っていると、1枚の名刺を渡され手に取った。


ドクン、ドクン。


北条司と記名された名刺には、私でも知っている雑誌の名前が書かれていて、緊張してしまう。


「この雑誌の読者モデルを探していて、イメージがピッタリなんだよね!」


どんなイメージのページなんだろう。