言ってやった。


「………先生、美鈴の家まで送ってもらっても良いですか?」

「わかった。すぐに車を正門の方に回すから待ってて。」


先生が理科準備室から出ていく様子を横目で見ながら、美鈴を横抱きして赤く火照っている顔を直視する。息は荒く、苦しそうだ。


「智樹くんさ」

「『智樹』で良いですよ。」

「じゃあ、智樹。美鈴のこと、いつも支えてくれてありがとう。」

「……父親みたいですね。……俺、そんなにお人好しじゃないですよ。下心満載で、あわよくば美鈴が振り向いてくれたら良い、なんて…」

「正直だな。」

「よく言われます。……本当はものすっごく大輝先輩に嫌な思いさせたいけど…」




「美鈴のこと、諦めます。」




「諦めて、いつまでも仲の良い親友でいたいなんて思ってるんで。変な心配はしなくて良いですよ。」


何処までも正直で真っ直ぐ。

そういうところ、美鈴に似てる気がした。


(……俺、こういう人に弱いんだよな)


「…………ありがとう。」


お礼を伝えて、美鈴の荷物を持ち上げる。そして玄関へと歩みを進めた。

正門に着くと、ぴったりのタイミングで先生の車が着く。

美鈴を乗せて、そのままついでに俺も送ってもらって…。


その道中。


智樹の言葉、表情、視線、声音を思い出していた。



心底、かっこいいと思った。