《ガラララ》


窓を開けると、そこには既に大ちゃんがいて…。

ごクリと生唾を呑み込んだ。


「どうかした?」


平然を装いつつ、スマホをポケットに入れて大ちゃんの方を向く。


「改めて、今日のお礼言おうと思って。」


気を抜くな私よ。油断した後に何か大きな話題ぶっ込んでくるかもしれないぞ…。

身構えながら、普段通りに接しよう。


「大ちゃんって律儀だよね。明日会った時とかでも良かったのに」


笑顔を浮かべて、ど正論。

……待て待て私…。

ここは絶対に素直に『夜も会えて嬉しい…!大ちゃん大好き!』って言った方が良いんじゃ…。


(うわぁあぁあぁあぁぁぁああ!!)


心の中であげる雄叫び。

忙しない胸中を知る由もない大ちゃんは…。


「確かにそうだな。明日…でも良かったかも。」


ほらね…。やってしまった。

素直じゃない可愛くない私を恨めしく思う。


「……ごめん。疲れてるところ。」

「ううん…!そんな!全然!」


語彙も壊滅的で…。もういっそのこと、『フってください』なんていう考えが脳裏によぎった時…。


「………ただ…その…」

「?」





「………美鈴に会いたくて…」






(うわぁあぁあぁあぁぁぁああ!!)






これは私の妄想が具現化する世界でしょうか。
きっとそう。そうじゃなきゃ、こんなにも幸せな想いができるわけがない。

でも思い切って頬をつねると、しっかりと痛い。


「………大ちゃん…なんか今日、変…。今日っていうか…その…体育祭の時から変…」

「『変』って…なんか傷つくなー。」

「だって…おかしいじゃん。こんなの…まるで…」


両想いみたい。


喉奥に迫り上げてきた言葉。でも何故か引っかかって出てこなくて…。
拒絶されたらどうしよう、という臆病な私の思考が一歩前進するのを躊躇(ちゅうちょ)させる。


「まるで?」


私を逃さまいとするような視線で大ちゃんは問いただす。


「……『まるで』、なに?」


自惚れても良いのかな。


好きな人が自分を好きな世界。


思い描いた理想だらけの世界が、もう目の前まで来てるなんて…。


期待しても良いのかな。


何を今更。宣戦布告して想い続けるって決めて、ここまで来たら…。




最後まで、ガメつく行かないでどうするよ。